令和2年5月7日

新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言について

 

連合三田会の皆様

一般財団法人 慶應連合三田会
会長 菅沼安嬉子
(元厚労省感染症審議委員・内科)

拝啓
五月晴れの爽やかな季節となりましたが、鬱々とした気持ちの毎日でございます。いかがお過ごしでしょうか。 4月7日に日本政府より発令された緊急事態宣言を受けて、1か月間様々な形で自粛を続けてまいりました。感染爆発は何とか抑え込みつつありますが、解除するまでのレベルに達していないということで緊急事態宣言は一部を除いて5月末まで延長されることになりました。
解除を楽しみにしておられた方々からはとてもがっかりしたとの御声を聞きますが、今ここで気を緩めるとあっという間に欧米諸国のような感染爆発が起こり医療崩壊の状態となります。辛い毎日ですがどうぞ耐え忍んで乗り越えてくださるようお願い申し上げます。

最前線の医療現場では、医療従事者を守るN95マスク、フェイスシールド、防護服などが足りず感染の恐怖の中でも重症者の命を守ろうと医療従事者達は休む間もなく必死で働いています。研究室では効果のある薬を探して一日も早く患者さん達に使えるよう頑張っています。2月、3月の暗中模索の頃から比べたら、トンネル出口の光が見えかかっています。

重症化しなければ怖い病気ではないので早く薬が初期から使えるようになるか、有効なワクチンをインフルエンザ予防接種のように希望する全員に打てれば通常の生活が可能になります。しかし、有効性、安全性が確認できてから薬を増産して世界の感染者に届けるまでにはまだ半年から1年近くかかるでしょう。

もう一つの問題は人の動きを抑えたためにあらゆる職種が立ち行かなくなりつつあるということです。いかに様々なネットワークの上にこの社会が成り立っているか思い知りました。倒産、失業の痛ましい知らせが入って来ています。
塾員の皆様の中には、ご自身が感染された方、もしかして身近な大切な方を失った方がおられるかもしれません。会社がとても痛手を受けておられる方や仕事を失った方もいらっしゃるのではないかととても心を痛めております。

皆様にお願いがあります。このような時、慶應社中の絆はとても大事です。知り合い、友人その他、電話やメールで安否を気遣ってください。久し振りに声を聞いただけで相手の方は落ち込んでいても勇気が出るかもしれません。困っていたら助ける手立てを考えてください。第二次世界大戦以来の国難に間違いありません。助け合って乗り切っていかなくてはならないと思っています。

慶應義塾はそのようなときに社会のリーダーとして活動してきました。ゆとりがある方は困っている方に手を差し伸べてください。ほんの小さなことでも辛いときの親切を相手はけっして忘れないでしょう。
特に2020年慶應連合三田会大会実行委員の方々は、頑張ろうという矢先に感染拡大防止のための自粛が始まり準備ができなくて大会を断念せざるを得なくなり本当に悲しい思いをされたことでしょう。楽しみにしていた方々も私も残念でたまりません。でもできなかった分をコロナで苦境にある方たちに何かしてあげられないか考えてくれませんでしょうか。よろしくお願いいたします。

新型コロナウイルスCOVID-19はとてもしたたかなウイルスです。症状が出る前から人に感染させ、軽症の人がいるかと思えば、基礎疾患がなくてもあっという間に悪化して死に 至らしめる場合があります。もう少しで有効な薬が使えるようになりますから、それまで油断なく身を守ってください。

まず喫煙されている方はすぐに禁煙してください。煙草を吸う人が一番肺炎になります。肺炎は非常に苦しいのです。今更と言いますが、今からでも違うそうです。また糖尿病、高血圧、心臓病、肺気腫、腎臓病、その他の病気で治療中の方々は服薬を止めないでください。基礎疾患が悪くなると重症化します。主治医に注意されていても守らない人もいますね。 今こそ守りましょう。

今年は残念ながら10月の連合三田会大会は中止になりました。でも来年は皆様がお元気で日吉の丘にいらしていただけるのをお待ちしています。きっとその頃には人類がコロナウイルスを抑え込んで楽しい日常になっていることと信じています。感染は必ず終息します。希望をもって待ってください。皆様のご健勝をお祈りしております。

敬具